子宮血流

中髎穴刺鍼が不妊症患者の
子宮・卵巣血流に及ぼす影響

明生鍼灸院             ○村中友香 高橋順子 青木美鈴
      木津正義 鈴木裕明
竹内病院トヨタ不妊センター                   俵 史子
明治鍼灸大学臨床鍼灸医学Ⅱ        本城久司 北小路博司

目的

我々は第51・52 回(社)全日本鍼灸学会学術大会において、難治性不妊症の中でも子宮内膜形状不良と
診断された症例に対して鍼灸治療の有効性を示し、生殖器への調整作用を報告してきたまた第55回学術大会において、不妊症患者の中でも特に治療歴が長い難治症例に対して中髎穴刺鍼を行い、その有用性を報告してきたしかしながら、鍼治療の効果機序について詳細は不明である今回、中髎穴刺鍼が不妊症患者の子宮・卵巣血流に及ぼす影響について検討した

竹内病院トヨタ不妊センターを受診し、高度生殖医療(ART)が必要と診断され、その後
胚移植を2回以上行うも妊娠にいたらなかった不妊症患者で本研究に同意した9症例

症例 年齢(歳) 不妊歴(年) 妊娠歴(回) 採卵回数(回) 胚移植回数(回) 不妊原因
1 28 2 1経妊0経産 4 3 男性不妊
2 26 4 0経妊0経産 4 4 卵管障害
3 39 4 1経妊0経産 7 5 機能性
4 35 4 1経妊1経産 2 4 受精障害
5 32 5 0経妊0経産 4 3 排卵障害
6 40 7 1経妊0経産 4 4 機能性
7 32 3 0経妊0経産 6 5 機能性・受精障害
8 32 6 0経妊0経産 2 3 機能性
9 31 3 0経妊0経産 2 2 機能性・排卵障害
年齢:26~40歳(平均32.8±4.6歳)
不妊歴:2~7年(平均4.2±1.6年)
病院通院歴:1~5年(平均2.4±1.4年)
採卵回数:2~7回(平均3.9±1.8回)
胚移植回数:2~5回(平均3.6±1.0回)
方法

治療穴:
  中髎穴

治療方法:
  腹臥位にて、ステンレス製ディスポ鍼
  (直径0.3㎜,長さ60㎜)を約60mm刺入した後、
  徒手的刺激を左右合計10分間行った

血流測定方法:
  LOGIQ400(横河メディカル)を用い、
  経膣的にカラードップラー法にて左右子宮動脈、
  子宮放射状動脈、左右卵巣周囲血管の
  resistanceindex(RI)を鍼治療期間前後に
  それぞれ測定した

方法

血流測定頻度:
  鍼治療開始前の月経周期3~7日目に一度
  血流測定を行い、鍼治療開始後2回目の
  月経周期3~7日目に再度血流測定を行なった

鍼治療回数:
  週1回の治療間隔
  合計7~15回(平均9.4回)

結果

結果

経過

考察

子宮動脈の血管抵抗値は胎児・胎盤循環と関連するといわれているまた、子宮放射状動脈の血管抵抗値は子宮内膜の状態を反映している今回、子宮動脈RI値は有意に低下し、子宮放射状動脈RI値は半数以上が減少したこのことから、中髎穴刺鍼が子宮の血流改善に関与したことが明らかとなり、我々が今まで報告してきた子宮内膜に対する鍼治療の有効性を裏付けする結果となった卵巣周囲血管RI値は左右共に有意な変化を示さなかったことより、中髎穴刺鍼が卵巣血流には影響を及ぼしにくく、卵巣血流においてはさらなる検討の必要性が示唆された

考察

北小路・本城らは骨盤内静脈うっ滞を伴う慢性骨盤痛症候群に対する治療法で中髎穴刺鍼の有用性を示しているまた、中髎穴刺鍼を行うも会陰部不快感を訴えた無効例に対して、陰部神経刺鍼点への低周波鍼通電療法を試みたところ、会陰部不快感の改善が得られているという報告もしている以上のことから、今後は、卵巣血流改善の治療法として、陰部神経刺鍼点への低周波鍼通電療法をはじめ、骨盤内への影響を及ぼす様々な治療を検討していきたい